2024年4月号

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ぼくの新店めぐり~雲海に泊まるホテル「コヤラボ陵雲荘」

 「雲海に泊まる」をコンセプトにしてアウトドア要素を盛り込んだホテル「KOYA.lab(コヤラボ)陵雲荘が11月11日にオープンする。宿泊できるトレーラーハウスのレンタル事業を手がけるコヤラボの新事業で、代表の岡崎慶太さん(48)は、「十勝観光の拠点になれば」と新たな十勝観光の発展に期待を込める。

ホテルのバルコニーから望む雲海(コヤラボ提供)


雲海名所をアウトドア拠点に
 岡崎さんがコヤラボを立ち上げたのは2017年。「手ぶらキャンプ」を掲げ、宿泊可能なトレーラーハウスを利用して十勝東北部3町を中心にアウトドア需要に応えてきた。しかしコロナ禍での売り上げは思うように伸びず、次なる一手を模索したとき、この地に目をつけた。

 元々トレーラーハウスの拠点の一つとして里見が丘付近の広場を利用しており、雲海が現れた朝の美しい眺望を知っていた。その里見が丘には10年ほど利用されていなかった旅館「陵雲荘」がたたずんでいた。「これだ」と思い、新たなアウトドア拠点となるホテルに改装しようと旅館を買い取った。

施設全景(コヤラボ提供)。敷地内にはキャンプサイトも設け、利用者はホテルのシャワーを利用可能


想定外の事案受け、ホテル新設へ
 コロナ事業再構築補助金を申請して5200万円の補助金が採択され、総事業費1億3000万円をかけた事業となった。しかし、リノベーションを予定して調整を進めていたが、半年がたった頃に耐震面などから現実的ではないことが分かった。

 補助金の期限は13カ月。残された半年で対応を迫られ、改装を諦めてホテルを新設することに決めた。2カ月で設計して4月から解体を始めて6月に着工した。10月半ばに話を聞いたときは「これから内装と手続きが必要で」と慌ただしい様子だったが、なんとか11月の期限に間に合った。

ホテル外観。足寄の町を一望できる高台に


寒さの壁を魅力に変えて
 マイナス30度を下回ることもある十勝は、通年でアウトドアを楽しむには冬の寒さが厳しい。しかし岡崎さんはこの厳しい寒さを逆手に取った。「寒さを一つの売りにしよう」。

 部屋には4人用のテントを備え、室内にいながらアウトドアの要素を味わえる。バルコニーも防寒カーテンで覆うため、冬でも外焼き肉を楽しめる。冬のアウトドアに興味を持ちつつも、その寒さがハードルとなって一歩を踏み出せないという声に応えた。「ここは寒さを楽しみながら、安心してアウトドア気分を楽しめる場所」と力を込める。

 ホテルにはサウナも併設しており、完全貸し切りで楽しめる(90分3000円から)。サウナで温めた体を水風呂で冷やし、極寒の外気を楽しむ。「夏はもちろん、冬も楽しめるアウトドア施設だ」。

サウナの様子。外には水風呂も備えた


十勝の食を外で楽しむ
 4人まで泊まれるバルコニー付きタイプが2部屋(1万5000円から)、バルコニー付きダブルタイプが1部屋(1万500円から)、シングルタイプが3部屋(8000円から)の計6部屋で、バルコニーには焼き台を設置して食材をその場で焼いて楽しめる。

 別途料金で食材の提供もしており、メニューは本別町の源すしがプロデュースする。訪れる客を町で囲うのではなく、あくまで拠点として北海道を楽しんで欲しいとの考えがあり、「十勝の食材が中心だが管外の食材も盛り込み、北海道を丸ごと楽しめるようなラインナップにした」。

 シングルルームに焼き台は設置されていないが、館内には上士幌のベーカリー「トカトカ」のパンを提供する自動販売機などを設置しており、十勝の味覚を味わえる。近く飲食業の許可を取得して、アルコールも提供する予定だ。

部屋のイメージ(コヤラボ提供)。テントの中にベッドを備え、気分はキャンプさながら


 「ここからの景色は、“あの曲” の世界観そのまま」と岡崎さんは表現する。足寄町出身の歌手、松山千春さんのヒット曲「大空と大地の中で」のことだ。果てしない大空と、広い大地のその中で-。

 絶景広がる足寄の高台で、北海道の食材とアウトドア気分を楽しんではいかが?

ホテルからの眺め。雌阿寒岳を正面に望む


<岡崎慶太(おかざき・けいた)>
 1974年本別町生まれ。本別中央小、本別中、札幌日大高、福井工業大卒。2009年に岡崎組(本別町)に入社し、17年にトレーラーハウスのレンタル事業会社「コヤラボ」を立ち上げ、アウトドアをフックにした観光客の誘致に努める。48歳。

ダブルタイプのシャワールームは窓を絵画に見立てた

外に備えた焚き火台。さび加工で味を出した

敷地入り口に立つ看板



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